仕事の合間の昼休み。
「オマエは彼女とか好きな人とかいねえの?」
不意に、お前が訊いてきた。
俺個人のことをお前が尋ねてくるのは珍しい。
興味を示された喜びと、答えられない罪悪感、
そして予想外の問いへの戸惑いに、
返す言葉が見つからず沈黙でやり過ごす。
「……昔から、自分のこと話したがらないよな」
おれにも言いたくねえ?
ぽつりと淋しそうな声。
お前にだから言えないんだ。
長い時間をかけて紡いできたお前との絆を、
たった一言で失くしたくない。
「それならもう、聞かねえよ」
都合がいいはずなのに、なぜ苦しいんだろう。
誤魔化せるだけの器用さが欲しかった。
そうすればお前を傷つけなくて済んだのに。
顔を見ることも出来ないまま、
そうしてくれ、とだけやっと呟いた。
3/7/2023, 9:19:34 AM