『君と出逢って』
「君と出逢って、どれくらいかな」
放課後、二人で寄り道した本屋でついそんなことを呟いた。
「え?」
「あ、ごめんなんでもない」
彼女には聞こえなかったみたいで、これ幸いと慌てて誤魔化した。
彼女は特に気にした様子もなく、また本を見始める。
聞きたかった訳ではなく、ただ何気なく呟いてしまっただけだから。
出逢ったのは本当に運命的で、私には忘れることなんて出来ない事だもの。
それから私の毎日は一変した。
例えるならば、モノクロだった世界がカラフルに色付いたようなもの。
「ちょっとコレ買ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
彼女を見送って、私はまた視線を元に戻す。
特設された本のコーナー。
一面に並ぶ彼の本。
私はまたうっとりと眺める。
「あぁ、愛しの君、名探偵様」
私に推理小説の面白さを教えてくれて、私の世界を変えてくれた大切な人。
今では私も立派なミステリーマニアになりました。
少しは愛しの貴方へ近付けたかしら?
5/5/2024, 1:37:03 PM