未知亜

Open App

ㅤその瞬間、世界から音が消えた。
ㅤ連休の晴れた銀座で僕は息を飲む。彩りの波の合間から、向こう側に立つ姿がまるでビームのようだった。
ㅤ見かけてもおかしくない場所だ。二人で来たことも何度もあった。背格好が似ているだけで、別人かもしれない。僕の頭の中を目まぐるしく思考が飛び交う。

ㅤ信号が変わる。四方から人並みが押し寄せて、僕は歩き出す。あさっての方向を見たままで。不自然なほど顔を背けて。
ㅤすれ違う瞳から、僕は目を逸らす。この中の誰よりも近くで、見つめ合う未来を夢みながら。


『すれ違う瞳』

5/5/2025, 9:59:23 AM