【春爛漫】
桜の木の下には死体が埋まっている、というのは有名な話だ。
そんな桜は本当に存在するのだろうか。
いや、ない。
あったら、大事件だ。
そもそも、根っこがしっかり張られた木の下を、人が埋められるサイズまで掘り起こすのは不可能だろう。
春爛漫の季節を彩る、学校特有の桜を眺めながら、馬鹿馬鹿しいと、首を振るのだった。
「小雨ちゃん、どうかしたの?」
背後から急に声をかけられ、思わず肩が跳ねた。
「貴女……いつの間に……」
振り返ると、見知ったお邪魔虫の顔。
「いっそのこと、こいつをここに埋めてしまおうか」
「え? なにが?」
思わず口に出ていたらしいが、私は気にしない。
恨めしそうに睨む私を知って知らずか、晴香は桜を見上げると、
「小雨ちゃんが埋めてくれるなら、きっと綺麗に咲くだろうな」
その笑顔は、あまりにも純粋で。
桜よりも美しく、死体よりも不気味なものを、私は見てしまったのかもしれない。
4/10/2026, 4:09:53 PM