彗皨

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キラキラと星が輝く空の下には
ゆっくりと波寄せている海が、私を魅了する。
「、…」
触れてみたい気持ちと、少しの恐怖心が私の心を煽る。

「入っても…いいよね、」
水沫が私の周りに飛び交う。
奥深い海の底に、段々と沈んでゆく私の体。
「…綺麗……」
海の中の景色は、言葉という既存のものでは表せないほどに美しかった。
海の景色に心を奪われていた私には、外の世界の音なんて全く気づく事ができなかった。

「ずっと、このままだったら……」
私が生きてきた人生で最も価値を感じた時間だった。


いや、もう既に時間は存在していなかったのかもしれない。

『速報です。
××県××市の海で大津波警報が発生しました。
市民の方は決して海辺付近には近づかず、直ちに避難してください。
繰り返します、××県××市の海で大津波警報が発生しました。市民の方は海辺付近には近づかず直ちに避難してください。』

「津波よ!!!皆逃げてー!!!!」
「あなた!!子供達を抱っこして逃げて!」
「みんなー!!大津波警報だー!!!直ちに避難しろー!!!」
市民の足音が市民の胸を圧迫する。

私の気は、もうそのときは確かではなかったかもしれない。だけど、その時、その瞬間に

怒濤の波が私を覆ったのだけはしっかりと記憶している。

8/15/2023, 11:31:38 PM