「おはようごぜーます」
我に返ると黒い髪の少年が、寝そべっている俺を上から覗き込んでいる。
「お元気でしたかー?いや、お元気もくそもないか。誕生日おめでとう玲人(れいと)、君にプレゼントだよ。ちょっといいリンス...今はコンディショナーって言うか、それをあげよう。枕元に置いておくのはちょっとあれだから洗面台の下に入れといたよ。あ、一応どこで買ったかの紙も入れといた」
彼はピッと何もない白い空間を指差す。
勝手に一人でぺらぺらと話を進める少年。用件だけ言って早く帰ろうとしているのがひしひしと伝わってくる。
「え、誰?」
「言うと思ったよ~」
そう言って少年は話を逸らした。
「不変こそ美って言うじゃん?」
「えっと...何の話...?」
「でも変わらないものって無いと思うんだよね。君だって変わってるし」
変わってるってどういうことだろう、と考えていると少年は続けた。
「だって前の君なら『え、誰!?』か『...誰』って言ってたし。まぁ自分が丸くしただけなんだけどね~」
今なんかとんでもないことを少年は言った気がする。
「まぁ君は変わって当然なんだよ。なんたって今いる中で四番目くらいに生まれてるんだから」
「...一番目は...?」
「一番目は、氷華(ひょうか)ちゃん。あの娘も色々変えてるんだけどね。ちなみに君の前は葉瀬(ようせ)だよ」
どう?嬉しい?と少年はわくわくしながら聞く。
「えっと、おかしいでしょ。葉瀬は俺より年下なんだけど」
「...そうか。今のはメタいか。この話止めよ」
止め止め、と少年は俺の顔の前で手を払う。
「とりあえず誕生日おめでとう。早く起きて彼女の顔見てあげなよ。前の君なら、想像出来なかった事でしょ?」
「...あ、玲人起きた」
そんな声がして目を開けると、近くに葉瀬の顔があった。
「おはよう。誕生日おめでとう玲人」
「おはよ......近い…」
俺は葉瀬の顔面を手で押し返す。ぐえっ、と変な声が聞こえたが気にしなかった。
お題 「変わらないものはない」
出演 玲人 葉瀬 氷華(名前のみ)
12/27/2024, 8:04:03 AM