揺れる羽根
雨は嫌いではない。むしろ好きな方である。
だが、外に出るのが億劫になるのが唯一の難点だろうか。
桜が咲いていたはずの木が成っている庭を眺めている。雨のせいか、外は鉛色の空だった。
座る体勢を直そうとすると、内揚げのところからカチャッという音が聞こえてくる。
刀が鞘の中で動く音は、好きではない。こんなに平和な時間に、争いのことを思い出すからだ。
「今日は寒いっつーのに、よくそんなところに居られんなあ……」
こんなに寒いというのに、袖なしで過ごしているような奴に、そんなことを言われても響かない。
だが、確かに今日は一段と寒かった。
「お前も、寒くないのか」
「いや、クソ寒い。だからお前を探していたんだ」
こんなに淀んだ天気が、カラッとなくなるほどに明るい笑顔を放つ左之助は、俺の手を握って何処かへと走っていく。
倉庫に辿り着くと、そこには羽毛が沢山あった。
「左之助、それ、どうしたんだ」
「気になるよなー、俺も分かんねえ。暖まろうって思って布探そうとしたら、こんなんがあったんだ」
そう言うと、左之助は羽毛が入った大きな入れ物に、手を勢いよく入れた。
あったけぇ!大声で笑いながらはしゃいでいる左之助を見て、何故アイツが袖なしで過ごせているか分かった気がする。
「齋藤!お前も入れてみろよ!」
「……いや、俺は」
「はあ、……まあ、そう言うと思ったけどよ」
満足したのか、左之助は手を抜いてこちらを見つめてくる。その表情は、何処か申し訳なさそうだった。
「なんか悪ぃな。俺だけ暖まって」
いや、全くそんなことはない。
「俺も、暖まれた」
「ああ、?本当か?」
コイツが袖なしでも活気が溢れているのは、きっと見えることのない羽根が生えているからだろう。
その羽根が左之助をずっと、ずっと守っている。
「……ああ、本当だ」
どうやら俺の口角は、上がっていたらしい。
それを見て驚いたのか、左之助は穏やかな表情で微笑んでいた。
それに対応するように、左之助から生えた大きな羽根は、ゆっくりと揺れていた。
10/25/2025, 10:33:40 AM