君と出会ってから、私は…………
「─それでさ、昨日おばあちゃんがさ……」
むか。
「おばあちゃん、いつもは……」
むかむか。
「で、今度おばあちゃんと出かけるんだけどさ、」
むかむかむか!!
性格が、悪くなってしまったかもしれない……!
家族想いなのはいいことだ。私は君のそういう優しいところに惹かれたわけだし。
「……あれ、どうかした?」
うう、私の様子にすぐに気づいて心配してくれる、そういう他人思いなところも好き……
いや、じゃなくて!
「おばあちゃん、おばあちゃんって!もうご家族の話はいいよぉ!昨日も一昨日も先週も、話題の中心おばあちゃんじゃん!私もう相槌のレパートリー尽きちゃったよ!!可愛い彼女が目の前にいるのに他に話すことあるでしょ!?
おばあちゃんは君にとってなんなのよ!!!」
「え……祖母……」
それはそう。
なんだか力が抜けてしまって机に突っ伏した私の頭を、ごめん、って謝りながらそっと撫でてくれる。
機嫌をとろうとしてるようだけど、残念!もう機嫌直ってます!私ほんとちょろい!
大好きな人の話を共有してくれてるのに、こんなことで寂しくなっちゃって怒って、私のばか……
「んーん、こちらこそごめんよ……」
君と出会ってから、私は少し性格が悪くなってしまったかもしれない。
彼の話すこと、することに毎日振り回されっぱなしだ。
~~~~~~~~~~
購買行ってくる、と教室を出ていく彼女を見送っていると、
「お前、また婆ちゃんネタにして彼女いじめてるのかよ。」
前の席の悪友が振り返って話しかけてきた。
「いじめてるとは失敬な。からかってるだけだ。可愛いだろ僕の彼女。」
そう、別に僕はおばあちゃん子ってわけじゃない。あ、祖母が嫌いって意味ではない。
平均的な祖母と男子高校生の距離感なので安心してほしい。
「いやまあ確かに反応可愛いけどさあ、」
「は?彼氏を目の前にしていい度胸だな」
「なんて答えたら正解のやつ?」
ちょっと引かれた。
「ほどほどにしとけよ~。流石にクラスの女子をネタに使うのとかは、」
「それは絶対しない。不安にさせるのはマジない」
「あ、そう……」
……僕のことで君がコロコロと表情を変えてくれるのがなんだか嬉しくて、ついちょっと意地悪をしてしまうんだ。
君と出会ってから、僕は少し性格が悪くなってしまったかもしれない。
5/6/2023, 10:38:43 AM