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鋭い眼差し

塚田毅(つかだたけし)、剣道部部長、鍛え上げられた体は太く分厚い。姿勢もいいため本来の身長よりも高く見え、その威圧感たるや。顔も武士のようなキリリとした男前であり、眼光も剣士のそれである。
その塚田の鋭い眼差しが見据えるものは。

つぶらな瞳が愛くるしいアザラシのぬいぐるみ。の山。ワゴンに積まれたアザラシを一匹一匹、眺めている。

「…なー、塚田。まだ決まんねぇ?」
いい加減この場を離れたい。
「まだだ。俺はこの中から一番可愛いヤツを選ばねばならん」
普通の人なら逸らされそうな塚田の鋭い眼差しを受けてもアザラシ達は変わらぬつぶらな瞳で見返してくる。…いや、顔一緒だろ。
塚田の年の離れた妹の誕生日プレゼント。絶対血、繋がってないよね?と疑いたくなる位、可愛い妹の花ちゃんを塚田は溺愛している。今人気らしいこのアザラシのぬいぐるみをプレゼントすることにし、先ほどから最高の一匹を選ぶべく吟味中。
…図体のでかい強面の男がカラフルなファンシーショップで。異様な雰囲気に店内の他のお客様に遠巻きにされる。

ちょっとツラ貸せ。そんな物騒な言葉と共に拉致られ、今に至る。
「一人でいいだろ、俺帰っていい?」
「俺は自分の見た目を把握している。こんな男が一人でこんな可愛いモン選んでたら怖いだろ」
だからって俺が居たって怖いモンは怖いわっ。寧ろ怖さ倍増だわっ。
怒鳴りたいのをグッと堪える。これ以上の悪目立ちは避けたい。

ブラコンパワー、すごいわー。

10/15/2024, 11:51:31 AM