「理想のあなた、だって。なんかある?理想」
白い世界に色を塗ろうと、筆を動かしていた彼女は聞く。
「あるよ~そりゃぁさぁ、誰だってさ、誰かしらに夢見るもんだからねぇ」
同じく、筆を動かしていた彼女は答える。
「ま、そうよな」
「言ってみる?色んな人の“理想のあなた”」
「じゃ、僕が最初なー。んーやっぱ、定番のアイドルとか?なんかさー知らねぇ人によく、夢見られてない?」
「それが仕事やけんな。仕方ねぇ、仕方ねぇ」
次の色をと、パレットに手を伸ばしながら話す。
「次、私か。警察官とかもよね。警察官みんな真面目で正義感強い、とか思われてるじゃん」
「警察官でも事件起こす奴は起こすよな」
それなー!と元気に同意し、彼女は白い地面に色を着ける。
「あれやね。こうやって言ってみてると、どんだけ僕らが周りに理想押しつけてるのかわかるね。」
「あの職業の人はこんなやろ、とかあんなやろ、とかねー」
「あ、待って。理想やなくて、イメージかも。」
「ややこしいから、理想ってことで」
彼女達は、世界に少し色を着けると立ち上がり、どこかへと消えていった。
5/20/2023, 2:15:21 PM