無音

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【187,お題:旅路の果てに】

今まで積み上げてきた長い長い旅路の果てに、勇者が掴むのは何だったのか

人は醜い生き物だから、偽りでも綺麗なものにすがりたがる

「勇者様はとても優しく強いお方だ」

そんなこと無いのに、僕だって1人の人間なのに

「たった1人で村を守り抜いたのだ」

そんなこと無いのに、仲間がいなきゃ僕だって戦えないのに

「勇者が様は絶対に負けない、必ず我々に勝利をもたらしてくれる」

そんなこと無いのに、僕はヒーローでも魔法使いでもない
絶対負けない、とかそんなのあり得ないのに


勇者は特別な力を持つ人間、その力が大きくとも小さくとも
他人からすれば、人と違う何かがあるというふうに見えてしまうだろう

人間は自分と違うものにはいつだって線を引いてきた
神のように崇めるか、家畜や奴隷のように蔑むか

長い旅路の果てに、きっと勇者は悪を打ち倒して帰ってくるだろう
だが、語り継がれる英雄と言うのは皆すでに死んでいるものだ

人から尊敬され羨望され、でもその眼差しが自分ではない何かを眺めていると気付いた時
勇者は一体何を得るのか。

2/1/2024, 9:43:10 AM