わをん

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『ひとひら』

夥しく咲いた花は春の嵐によって散らされ叩きつけられて無惨とも呼べるほどちりぢりになっていた。雨の湿り気を残して折り重なるように積まれた花弁は美しい色をしていたがきれいと形容するには程遠い。
昔々に似た光景を見ていたような気がする。私は花だったか、それとも嵐の方であったか。

ふと、枝先に残った花が冷たさの残る風に吹かれてひとひら宙に舞った。あちらこちらへ身を翻しながらやがて地に落ち土に還る姿は地に落ちているすべての花がきっと夢見た最期そのもの。元に戻ることは二度とない。
私は嵐であったことを思い出してその場に蹲った。

4/14/2025, 4:22:44 AM