呼吸のひとつが、瞬きの一瞬さえももどかしい。圧縮された時間の中で、意識が交錯する。人間の持ちうる集中力を根こそぎかき集めて、ようやくその扉に人は手をかけることが叶う。
そこは、そういう次元の世界だった。選ばれし者、ひと握りの人間だけが足を踏み入れることが叶う。しかし、心して踏み入れよ。資格を失えば、その一瞬はあっという間に今を置き去りにしていくだろう。
思考を、感覚を、命を研ぎ澄ませ。出し惜しみなど以ての外だ。全力こそが、その刹那を生きるための最低条件である。
忘れるな。
忘れるな。
忘れるな。
眩い閃光が微笑みながら隣を駆け抜けていった。
4/28/2024, 2:34:30 PM