椿灯夏

Open App

お題《風が運ぶもの》

「愛は不確かで幻想だ。君はそれでも愛は崇高だと歌うの。――ねえヒメサマ? 愛はもっと毒を孕んでいて、狂気なんだけど、それでも君は素晴らしいと俺に嘘を説くわけ?」


カラスのように夜を纏った青年は柔らかい笑顔を浮かべている


月でさえ彼を照らすのは難しく

すべての光から隔離されているようだと少女は思った


はじめて出会ったのは町の果てにある古びた教会

カラスを肩にのせた女神のステンドグラスが

印象的だったのを今でもよく覚えている

それをじっと見つめる青年は身動きもせず

何の感情も無い表情で

ただ――それを眺めているだけだった


身寄りのない少女はその教会で住まわせてもらっていた

しかし青年を見たことはなかった


町でもそんな青年はいない


見目が美しく整っていたが

吐く言葉はすべて毒でしかなく優しさはないに等しい


《途中書き》

3/6/2025, 1:09:14 PM