: 一筋の光
さ、財布がない
確かここに入れたはずなのに…
もう一度、鞄の中をかき回す
ポケットの中にもない
どういうこと…、もしかして
慌ててたから落としたのかも…
焦る背中に声がかかる
「あの、これ落としましたよ」
一筋の光が差すとは
まさにこのことだわ
探す手を止め、高まる気持ちを抑え
笑顔を貼り付け振り返る
そこに立っていたのは…
ウェーブの髪がふわりと揺れる女と
警察官の男が一人
私の顔から血の気が引いていく
今にも飛びかかろうとする女を
警察官は片手で静かに制した
私から視線を外すことなく…
冷たく光る目に捕まった時点で
私は逃げることさえ浮かばなかった
「さぁ、話を聞かせてもらおうか」
折角差した希望の光が
瞬く間にチリチリと消えていった
桜月夜
11/6/2024, 4:33:01 AM