お題「0からの」
「初めまして!今日からお世話になります私と言います!よろしくお願いします」
頭を上げると
私の目の前にいる10名ほどの男女と視線が交わった
数名が拍手しており、笑顔の人や真顔の人、睡眠不足なのか欠伸をしてる人もいる
先日ここに来る前面談をしてくれた人が私を紹介した後、集まった人達は解散していった。
今日からここが私の居場所なのだ
しかし自分でも驚いている
私は現在17歳のピチピチの女子高生だ。これまでの人生、勉強も部活も友人関係も何不自由なく過ごしてきた。怖いものは何も無かった、将来について考えた事はあるけど、やりたい事やなりたいものも無かったので、とりあえず良い大学に行こうと勉強だけは真面目にしてきた。成績も悪くない。
何も怖くない
私は何でもできる
私の体は少し震えていた
面談してくれた人が今日の仕事について私に話かけてくれていた
私は震えを抑える事に必死で話の内容をあまり聞きとれなかったが、とりあえず相槌をうっていたら
「じゃあよろしくね」
と面談した人の声が聞こえた後、面談した人は別の場所に行ってしまった
やってしまった。話の内容を全く覚えてなかったので、何をすればいいのか分からない
友人と会話してる時や授業中に別の事を考えてて聞き逃した時と同じだった
「私ちゃん今の話聞いてた?笑」
「え、ああ。聞いてたよ!」
「えーうそー?笑この前の〇〇先生のおもんないボケをどうすれば面白くなるか考えてたんでしょ!」
「なぜピンポイントに!?笑」
懐かしい
ふと思い出してしまった。やっぱり人の話聞いて無いって事相手は気付くのかな
もう会えないんだ
ふと声が漏れた
ハッと気づいて
「ダメだダメだこんなんじゃ」と誤魔化した。
とりあえず内容は分からなかったから、周りの人を見て真似してみよう
私は元気よく挨拶したり、皆んなの真似をしたり、近くの人に聞きながら何とかやりくりしていった
私はできる
私は大丈夫
心の中で何度も自分を鼓舞しながら、不安や恐怖を出さないように、何度も心の中で自分を称賛した。
ーーーーーーー
「今日来た新人ってどんな人なんすか?やたら元気でしたけど」
「ああ、私ちゃんか、あの子なあ。」
「何か訳ありっすか?確かにここはそんな人多いですし、寮もあるから家出した人が来るにも丁度いいっすよね」
「家出か」
面談した人は困惑気味の顔をして呟いていた
「やっぱ家出なんすかねー」
「そうかもな。事情はもう少しあの子がここに慣れたら聞いてみよう。あの子は面談する前に街で出会ったんだが、その時にあの子が言ってた事が少し気がかりだな。」
「何て言ってたんすか?」
「住所が無い!街は一緒なのに何か違う!ここ地球?でも私の家はある!でも表札が違う!知らない人が住んでた!怖い!助けて!とか言ってたな。」
完
2/21/2023, 11:51:01 AM