トト

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『薬屋のひとりごと』は、中国唐時代の宮廷をイメージされて作られたマンガだが、

宮女達はガチガチのルールに縛られてか細く生きていたようだ。

そもそも皇帝の為の宮女であるから、ルールも皇帝ありきで作られている。宮女の人権など毛程も考えられていないのだ。

例えば、自由にトイレに行く事が出来ない。運悪く失禁などしようものなら死罪であるから、ご馳走があったとしても少しだけしか食べない、飲まない。それはルールにはないが、排泄しないためには結局そうせざるを得ない。

このように、昔作られたルールには酷いものもあるのだが。

ルールなんてなるべく決めない方が良い、人は自由が1番なような気がするが、案外、縛られて生きる方が楽だというパターンだってあるのだ。


私は、商売に失敗し、財産を全て失い、借金が山のように残った。

浮浪者にまで堕ちたが、冬になって寒くてどうしようもなくなり、結局は役所に泣きつき、ある施設の世話になった。

憲法第25条 生存権によって国民は守られているのである。

施設に入った日、A4で20頁程の冊子を渡された。施設内での禁止事項や、施設の目的、方針が書かれていた。

施設が私を支援してくれるのは最長で6ヶ月。その間に自立の道を見つけなければならなかった。

いや、自立と言うからには新居を見つけ、そこへ移らなくてはならず、家賃、敷金、礼金分くらいを貯蓄する為には、3ヶ月以内に再就職するのがリミットなのだ。

当時の私は55歳、再就職はそう簡単な問題ではないのだった。


その話はともかく、私は施設から渡された冊子を毎日、穴が開く程読み込んだ。

施設では夜10時消灯。1部屋に6人寝ていてベッドの間はカーテンで仕切られていたが、やることがないので豆電球で冊子を読んでいた(スマホは棄てていた)。

施設では毎日3食出たほか、1日400円支給された。400円で何が出来る??
俺たちを馬鹿にしてるのか?

いや、違う。

その冊子はホチキス止めされた粗末なものだったが、内容は素晴らしかった。

浮浪者は私1人ではない、世の中には、たぶん何十万人といる筈だ。それをそのまま放置するより、再生させて税金を回収した方が、国としても助かるのだ、

半年間せっかく世話した後に、また浮浪者に戻られては支援した意味がない、国だとて何とか我々に立ち直ってもらいたいのだ、そして立ち直る為の支援なら、国は喜んで出してくれる。

だから、徒手空拳の浮浪者が、どうにか再生する方法が、その道筋が、よく読むとそこには確かに記されていたのである。

施設の職員は、いちいち、ああです、こうですなどと説明はしてくれないが、実はお得な情報満載の冊子だったのだ。

私は2ヶ月で再就職し、5ヶ月と少しで施設を出たが、

その頃には内心では施設が居心地いいと感じていた。驚いた事に、共同生活も10時消灯6時起床も慣れたらどうと言う事もなかった。

それまでの私の生活は、だらしがなかった。お金も野放図に使っていた、施設での暮らしは、自分を見つめ直す良い機会であった。

そう、私はもちろん自由が好きだったが、本当は、

ある程度ルールに縛られていた方が自分を良く律して、むしろパフォーマンスが上がる男だったのだ。

その後の私は無駄遣いを排除し、山のような借金も、返済のこり僅かの状態に迫っている、多分、余裕で返せるだろう。

ルールに縛られながらも、ルールを熟知し、逆に利用する方法もあるはずだ。

ルールも、あんがい捨てたもんじゃないのかも知れないと思う。

4/25/2024, 12:41:30 AM