レモンティー

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ずっと隣で、それでいて遠くに感じる鈴の音があった。
それは決まってまぶたを閉じている時に聴こえてくる。
10年前からずっとのことなのに、恐怖は感じない。
むしろ聴けば穏やかになれる。

それはきっと、いつか自分の膝元ほどの近さになるまで続くのだろう。じわりじわりと近づいてくる、そんな予感がする。

死神でないなら、なんでもよかった。

でも、ちょっと酷だとも思う。
10年も前に亡くした愛猫がお迎えに来るだなんて、考えもしない。

もし、私のこの愚かな考えが正しいと証明されるのなら、私はきっと向こうに行っても愛猫とともにあるんだろう。

あの目つきの悪いサビ猫が、私を迎えに来る。
なんて私は幸せ者なんだろうか。
怖がるはずの死を楽しみに待てるだなんて、なんて幸せなんだろうか。

3/13/2024, 2:09:33 PM