あまり

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オホーツクの海から湿った風が吹き
蝦夷にも梅雨が訪れて
雨音は心地よいけれど
雨垂れの音は煩わしい
腫れ上がった脳みそをつつかれるようで
じめじめと湿気は鬱陶しいけれど
微かなカビ臭さは嫌いじゃない
押入れの匂いを思い出すから

押入れに重ねられたお布団の上
タオルケットにくるまって
壁のしみを眺めていると
そこはいつの間にか嵐の海に浮かぶ船上で
恐ろしい怪物と戦ったり
無人島に流れ着いたり
野生の動物と友達になったり
焚き火を囲んで
名前のわからない果物や
骨付きのお肉を食べた
それは目を瞑って見る夢よりもずいぶん鮮やかで
梅雨になると
暗がりで見た白昼夢の
無人島に住む虎の
くすくす笑いが
あちこちの隙間の影から聞こえる気がする
カビの匂い
湿気取り買いに行かなきゃ


『梅雨』

6/2/2024, 7:40:06 AM