私が見る夢はいつだって悪夢で、終わりのない闇の中をぷかぷかと浮いているだけのものだ。そんな悪夢が、月に愛されたこの世界に来てから少しだけ変わった。それまで浮遊していた闇の世界に薄明かりの光が差すようになった。
日によって差してくる光に違いがある。ある日は木漏れ日のような光が、ある日は曇り空の隙間から差す太陽みたいな光が。その光にはどれも見覚えがあった。この地に来てから心を紡いだ人たちとの思い出の光だ。
手を伸ばしてその光に向かおうとしても届くことがなかった。確かに光は目の前にあるのに、光の元へ行こうとしても届かない。ただ光と闇に挟まれて浮いていることしか出来ない。手が届きそうになったところで目が覚める。
「……。」
自分が臆病ゆえにあの光に手が届かないことは分かっていた。本当にこの光に逃げていいのか。闇から目を逸らすべきではないと誰かに叱責されないか。光と闇の狭間でひたすらに自問自答をして、光に手を向けることを躊躇する。だからこそ光は私を受け入れない。
「はあ……。」
何度見ても慣れない狭間の夢がいつか葛藤を乗り越えて別の夢を見られるように、と淡い期待を抱いてベッドから身を起こす。
12/3/2024, 9:41:47 AM