鋭い眼差し
その男は何かを見ていた
真剣な眼差しは何かを射るように鋭く
決して良いとはいえない人相に
道行く人々も警戒し
遠巻きに避けていく
私が声をかけられたのは
たまたま他の人より足が遅かったからか
異様な眼差しに一瞬立ちすくんだからか
とにかく
声をかけられたからには
無視をするとこができなくなって
な、ななな何でしょう?
怯えきった声を発すると
男はその見た目には似合わぬ小さな声で
南改札口はどちらでしょう?
丁寧な言葉で聞いてきた
きょとんとする私に
いえ…今日はうっかり眼鏡を忘れてきてしまいまして
案内標識がよく見えないんですよ
申し訳無さそうに言葉を続ける
なぁんだ
鋭い眼差しの正体はただの近眼さんでしたか
あまりものギャップに
私の警戒が音を立てて崩れてしまった
あなた、誤解されさすそうだし
そこまで案内しますよ
手を取り
向かう方向を指差す
それが私と
人相は悪いけど気が弱い貴方との出会いだった
10/15/2023, 12:18:30 PM