同情
「あー、やっぱり好きだわー。」
「それ口癖だよね。」
最近学校では、いつもこの会話から始まる。
私のクラスには隠れイケメンと言われている□□くんがいる。
私は密かに□□くんに好意を寄せていた。
学校の中で知っているのは親友の♡♡だけだ。
♡♡はいつも私を支えてくれる。
けれどなぜだか急に甘えてばかりはだめだと感じ、自分で行動しようと思った。
今日、告白しよう。
「私、今日告白しようと思う。」
「えぇー!急に?!」
「頑張るね。」
「う、うん。頑張って。」
この手の話には食いつきがいい♡♡が少し動揺して不安そうにしていた。
心臓からドッキンドッキンと音がする。
顔に血がのぼってきた。
□□くんはすぐそばにいる。
「あ、あのー□□くん。」
呼べた!
勢いで呼んでしまったけれど、すでにくじけそうで逃げ出したくなった。
「ん?どした?」
「えっと、その、このあと時間ある?」
「うん、あるよー。」
「できれば、人があまりいないところでお話したいことがあって。」
「あー、じゃあ3階の踊り場いく?」
「あ、うん!」
しっかり喋れているだろうか。
今にも倒れそうなくらい緊張して、変な汗もかいてきた。
よし、とりあえず誘うことはできた。
そこでチラッと♡♡を見た。
♡♡は親指を立ててニッカリとしている。
けれどなんだろう。
表情が少し曇っているような気がする。
足を止めて体調の調子を聞こうと思ったが、すぐに♡♡に「行け」の合図をされた。
私もOKの合図を送る。
貴重な体験だ。
頑張ろう。
「話って?」
踊り場についてしまった。
言う覚悟はできている。
「その…□□くんのことが好きです!」
「……えっと…ごめん。君の気持ちには応えられない。」
頭にのぼっていた血が一気に下がり、冷静になった。
「そう…だよね。聞いてくれてありがと。」
これが今言える限界だ。
私はすぐさま走って♡♡を探した。
「うわっ!」
人にぶつかったけれどすぐにそれは♡♡だということがわかった。
ずっとなっていた耳鳴りがそこでやっと静かになる。
「私ね、言ったよ。
告白したよ。
振られたけど、悔いはないよ。
でも、でもね…。」
それ以上は涙が止まらなくて喋れない。
けれど♡♡には私の心はお見通しなのだ。
「うん。
悲しかったんだよね。
悲しいよね。
大丈夫、大丈夫だよ。」
♡♡はいつものように私に同情してくれた。
また私は♡♡に甘えている。
♡♡のそばにいると落ち着く。
次の日□□くんが告白されて付き合ったという噂が広まった。
私は、噂が尾びれ背びれついて広まってしまったのだと思いこんでいた。
告白した身としては居心地が悪い。
運良くまだ□□くんは学校に来てないけれど。
それにしても今日は♡♡も来るのが遅い。
まだかまだかと窓を見ながら待っていると、♡♡の姿が見えた。
安心と嬉しさで体を上げて目を凝らすと♡♡は誰かと楽しそうに話している。
二人は校門の前に立つなり、繋いでいた手をほどいた。
あの同情は何だったのか。
私は思わず呟いた。
「□□くん…。」
2/20/2024, 12:01:19 PM