霜月 朔(創作)

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big love!



貴方に初めて、
手を差し伸べてくれた、あの日。
私は今でもよく覚えています。

冷たい風の中、
その温かな掌だけが、
この世の真実のように、
感じられたのです。

いつからだったでしょうか。
貴方が、他の誰かに笑いかけるだけで、
この胸が、酷く軋むようになったのは。
私に差し出された手の温もりが、
特別なものではない事に、
暗く深い孤独を、
感じてしまうようになったのは。

貴方は、知らなかったのでしょう。
私が、どれほどの熱を、
この胸に灯していたのか。
それが、どれほどの暗闇を、
孕んでいたのか…を。

貴方の未来を想うたび、
私は、息が詰まりそうになります。
私の知らない貴方の時間が、
ただ、恐ろしくてたまらないのです。

私は、貴方を憎みたくなどなかった。
ただ、ただ、
私だけを見ていて欲しかったのです。
貴方が、他の誰かに向ける、
その優しさを、
私だけのものにしたかったのです。

どうか、
私だけを見ていてください。
どうか、
他の誰にも優しくしないでください。

私が、貴方を守ります。
貴方を壊すものすべてから。
例え、それが、
…私自身であったとしても。

それが、許されぬのならば、
せめて、
この腕の中で眠って欲しいのです。

貴方の呼吸が止まっても、
心が止まらぬように、
深く、深く、
貴方の魂さえも、
私のものにしたいのです。

だから、私は、
貴方を抱き締めながら、
冷たい切っ先を突き付けました。
そして、貴方は、
私の刃をその身に受けてくれた…。
それだけで、もう十分でした。
私は貴方と、
一つになれたのですから。

これが、私の愛。
貴方のすべてを欲した、
狂おしいほどに純粋な、
…大きな愛。

私も、もうすぐ、
そちらへ参ります。
ですから、どうか、
あの日のように、
また、手を伸ばして、
私を迎えてください。



4/23/2025, 9:05:24 AM