「信頼できる仲間を探しているんだ」
そう言って手を差し伸べてきた勇者を、怪訝そうな顔で見上げる魔物
「僕は人間を殺した魔物だ。信頼も何もないじゃないか。憎むべき存在じゃないか」
そう言うと勇者は憐れむように眉をひそめ、
「それは彼らが君を殺そうとしたからだろ。正当防衛さ。それに僕は君を信じちゃいない。僕は、君を信じる僕自身を信じているんだ。」
懐かしい夢を見ていた
魔王を倒した勇者一行は既に死去している
今、世界の秩序を守っているのは、勇者一行の生き残りである魔物、たった一人だ
「ねぇ、なんでせかいのちつじょをまもりつづけているの?」
街の子供が尋ねると、魔物は決まって答えるのだ
「僕は彼らが迎えにきてくれるのを待っているんだよ。だって彼らは唯一僕を信じてくれた『仲間』だもの」
彼にとっての仲間は種族でも年齢でも性別でもなく、本当に信頼できる存在なのだろう
勇者が彼を信頼していなくとも、この魔物は心の底から勇者たちを仲間と思っているのだ
12/10/2024, 12:46:00 PM