朝焼けが街を照らしていた。
時に、朝焼けは新たな始まりを予感させるようだが、今日においては最悪な始まりだった。
宝物は大事に大事に保管しなければならない。
だから、綺麗なままずっと置いていたのに…失ってしまった。
どこに行ったのか、どうすれば再び手に入れることができるのか。
何一つ見えない。あてがない。
もう2度と失くしたりしないと決めていたのに。それなのに…。
大切な大切な宝物。他の誰にも渡したくない。
触れるのはおろか、見られる、認知される、そんなことさえも嫌だ。
GPSでも何でもつけておけばよかったんだ。
場所さえわかれば直ぐに迎えに行けるのに。
知っている。
わかっている。
宝物はなくしたんじゃない。
宝物は逃げ出したんだ。
丹精込めて用意したもの全てを捨てて、旅立ってしまったんだ。
ねぇ、どうして?
あんなにも素敵な空間を作り上げたのに。
何がいけなかった?
何が足りなかった?
どうすれば…ずっとそばにいてくれた…?
次に見つけた時は、もっと素敵な空間を約束するよ。
もう2度と逃げ出したいなんて思わないような。
3/25/2025, 8:59:15 AM