ちる

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「海が見たい」と
ワガママ言ったあたしを
君がこっそりと連れ出してくれた。

『暗くて何も見えないよ』と
君は笑っていたけど
たどり着いたそこは
思っていたよりもずっと明るい月に照らされていて。

冷たい風に混ざる潮の香りから逃げるように
マフラーに鼻先を埋めた。

『「寒いね」』って笑い合う。

その君のまつげに
そっと乗った雪。

初めて見た 海に降る雪 は
まだ溶け残って、あたしを冷やしてる。

夏になった 今も。



【夜の海】

8/15/2024, 3:30:46 PM