あれから長い月日が流れましたね。
僕はあの日貴方が言った事を今でも覚えています。
『どんだけ年をとっても俺はお前がお前だってきっと分かるぜ。』
あの狭い、檻の中に居た十年間。
僕は自分の本当の能力をやっと見つけました。
あの時までに見つかっていたならばこの状況も変わっていた。
そうは思いますが、貴方が本当に望んだ展開だったのならそれで良いと思います。
『超能力』というのは奇妙なものです。
何も無い空間から何かを発生させる、
常人離れした、人間離れした力。
貴方の場合は、他の、人間を超越した存在、『ドラゴン』に
姿を変えることが出来る。
姿が変わっても、僕は貴方が貴方である事が分かります。
──
あの森
僕達だけが知る秘境に貴方は居た。
僕には分かります。
美しい碧眼。
藁のような柔かな色の身体。
失われた左腕。
温もりは当に消え失せている。
掟を破り、人の姿で居られなくなった貴方は
この場所で自らの首を打ち、命を絶った。
『生きたい』と言った貴方がどうしてこんな事をしたか理解が出来ません。
今の僕ならば出来るかもしれない。
あの瞬間の、笑顔が絶えなかった貴方を、
再び蘇らせる事が出来るかもしれない。
姿形が変わっても関係ありません。
貴方は貴方です。
だから、僕の隣で笑って欲しい。
今度は何にも縛られる事無く、生きられる。
貴方が望むのなら、僕はどんな物だって犠牲に出来る。
─この命さえも。
10/30/2022, 10:58:49 AM