「続いてのニュースです。〇〇市で発生している、通り魔連続殺人。被害者は全員女性で───」
通り魔殺人か…発生してるの近いなぁ。
あ、今日遊びに行くんじゃん。早く準備しないと。
「もう夜だけど、一人で帰れる?」
「あんたと違って子供じゃないんだけど〜」
「俺だって子供じゃねえし」
幼なじみとずっと続けてきたやり取りを交わす。
コツコツコツ…
後ろから足音が聞こえてきた。まあ多分、通行人だろう。
「うあああああっ!!」
「え…」
通行人だと思っていた人は、ナイフを持って走ってきた。
人って、動揺すると足、動かなくなるんだなぁ。
グサッ
肉を抉る嫌な音がする。けれど、痛みは感じない。
「…嘘…」
夢だと思いたい。赤い花を咲かせていたのは、私じゃなくてあいつ。
「なんで…!!」
「…怪我、ある?」
「馬鹿じゃないの!?なんで…おかしい。間違ってる。なんであんたが…」
「…たとえ世間でこれが間違いだったとしても、それはあくまで世間で間違ってるだけ。俺は他の知らないやつに、正しいか間違いかって決められたくない。俺が正しいと思った判断が、俺の世界の正しさだから」
こんなこと言うやつじゃないでしょ、あんた。
嫌。なんで…なんでなんで。どうして…。
桜の花びらが、こいつをさり気なく覆い隠すように散っていた。
「〇〇市で発生している、通り魔連続殺人。新たな被害者です。今回は、男性が───」
あいつを知らない人は、どう思って見てるんだろう。なんとなく見てるのかな。
あの日、遊びに行かなければ、生きていたのだろうか。
「来たよ。もう春だね」
当然、返事はない。
「あんたが死んで、もう8年だよ」
私ももう24。立派な社会人。
「あんた、本当に最後まで馬鹿だったよね───」
でも、こいつの馬鹿で私は今、生きてる。
「私を置いて逝くとかさ、一応あんた彼氏でしょ?彼氏がやっていい行動?」
こいつが今生きていたら、どんな人生だったんだろう。今でも私たちは付き合ってて、また冗談言い合ってたのかな。
「…あんたが彼氏で、良かったと思ってる」
桜の花びらが、私たちを優しく包むように散っていた。
4/22/2024, 11:38:58 AM