「お前はもっと勉強するべきだろうが!下っ端にいるくせに調子に乗ってんじゃねぇ!」
お父さんにそう怒鳴られて私はお決まりのように身体が震えた。家を静かに飛び出して、冷えきったアスファルトを蹴りながら夢中で走った。隣町の川沿い。橋の下にそっと息を潜めた。
「なんでこんなのもわかんないかな…姉として恥ずかしいわ」
「いっつもスマホばっかりいじってるから頭が悪いのよ」
「どうしてお前だけこんなに頭が悪いんだ!もっと努力しろよ!!」
数々の罵詈雑言を浴びて生きてきた。何か言われる度に黙り込む事しか出来ないし、誰かが話している声が私に向けられたものだと思って震えが止まらない。呼吸を必死に整えて、徐々に冷えていく指先を首に当てた。
「なぁ、ここで何してんの」
不意をつかれて身体が強ばった。視線をズラすと、そこには幼馴染がいただけだった。
「なんだ…アンタか。いや、別に。散歩してただけ」
「嘘つけ。なんかあったんだろ。無理には聞かないけどここは寒いからどっか移動するぞ」
無言で頷き、私は彼と夜道をフラフラと歩いた。
「なんかさ、もう疲れたんだよねーたぶん」
「…そっか」
「周りの声聞くのとかどんなに頑張っても報われないとか…これが現実かー厳しーって」
「……」
流れる沈黙に気まずさは覚えなかった。むしろ、そんな時間すら理解し合える仲だったし。
「…あのさ、お前…死ぬなよ、絶対に」
「は?…え、待って待って、なんでそうなる?」
「いやだから別に…ただ死ぬのだけはやめとけよって」
「……まぁ、そこまでは考えてなかったけど、約束はしとく」
「俺はお前が死ぬくらいなら親父さんとか家族とかお前の事苦しめてる奴から連れ出すくらいは…できる」
「ありがとね。。。あー帰りたくないわー」
「俺も帰したくねーよ」
「……?」
「そんな変に捉えんな。どう考えても今の状況で帰したくはないだろ、」
「そだよねー…アンタは私の命綱だからねー」
「……本気で。いつでも連絡していいから。遠慮すんなよ」
「わかってる。ありがと」
このまま時間が止まればいいと思った。苦しめられる事もなく、言わなくても全部わかってくれるコイツとただずっと一緒にいたかった。冷えた空気も繋いだ私たちの手の温もりには勝てなかったみたいだった。
題材「ずっとこのまま」
1/12/2026, 11:11:22 AM