まにこ

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そう遠くない未来、身も心も堕ちてしまう気がした。
何が俺をそうさせたのかは分からない。
ただ只管逃げなければという己の直感に従い、着の身着のまま身を隠すに至る。
それなのに、だ。
「帰ろう」
どうやってここを嗅ぎつけたのかは分からない。
目の前にいる白髪の男、よく見知った顔なのに、今はただただ身体の震えが止まらないのだ。
「お主、本当は知っておったのじゃろう」
男は俺の身体を指差す。
「……もう、そこにおる、よ」
少し膨らんだ己の腹、ここ最近の嫌になるほどの体調不良、答え合わせをされた気がした。
「帰ろう、皆がお主の帰りを待っておる」
くらくら目眩がした、と思ったらそのまま意識は泥のように闇中に沈んでいった。

2/13/2025, 1:02:48 AM