lily

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私の妹、香奈(かな)は、信じれないほど泣き虫だ。
感動する本や映画はもう100パーセントと言っていいほど絶対泣くし、怒られただけで泣いてしまう。
でも私は、そんな妹が大好きだった。


「ねぇ、お姉ちゃん」
少し泣き声になりながら、私に呼びかける。
『ん?どうしたの?』
「私さ、小さい頃よくいじめられてたよね
私が本当にすぐ泣いちゃうから、泣き虫すぎて、いじめられてたこと
覚えてる?」
『うわ、あれかー。
 懐かしいね』
「私ね、あの時お姉ちゃんに庇ってもらって
『香奈は弱いんじゃない! 強くなるために泣いてるの‼︎』
って言ってもらったこと、本当に嬉しかったんだよ。
私だって、泣きたくて泣いてたわけじゃないんだけど、
周りはそれを理解してくれなくて…
だから、本当に嬉しかった。
今更だけど、ありがとう」
『私は香奈のお姉ちゃんだからね。
またあんなこと言われたら私に相談してよ?
私じゃなくてもいいからさ。
…頼むから、抱え込まないでね?』
「…お姉ちゃん、本当にありがとう。
私、お姉ちゃんの世話になりっぱなしだね」
『そうだね〜。
でも、私がしたくてしてたんだから、気にしなくっていいんだよ』
「…お姉ちゃん、私、もう泣かない」
『え?』
「私、お姉ちゃんに心配されてばっかりだから、
もう、安心させたいなって思うの
お世話焼きのお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないよ?
…お姉ちゃん、私のこと、命懸けで守ってくれたでしょ?」
『…ねぇ、香奈』
「私、お姉ちゃんのおかげで今も元気で過ごせてるんだよ。
…私も、お姉ちゃんみたいに強くなりたいんだ。
大切な人を、守りたい」
『香奈…』
「ごめんね、お姉ちゃん…
私守られてばかりだった。
でも、感謝してる。ありがとう」
『香奈』
「お姉ちゃん…もう、心配しなくていいんだよ」
『香奈!』
「もう、泣かないよ。
笑って、元気に過ごす」
「泣かないから、安心して」と繰り返す妹は
前を向いて、歩こうとしている。
…私はもう香奈のそばにはいれないけれど。

…香奈はこんなにも強くなったんだな。
「お姉ちゃん、ありがとう。
私を守ってくれて、愛してくれて」
『香奈、ありがとう。
あなたを守れて、愛せることができて、よかった』
だからどうか、お元気で。

3/17/2023, 1:13:27 PM