いつからか。
私の母は夜の仕事に行くようになった。
私はひとりぼっちで寝ることになるので寂しかった。
それでも、母に寂しいと言うことは出来なかった。
母がいつも疲れた顔をして帰ってくるから。心配をかけたくなかった。
今日も母は仕事に行った。
私は眠れず、夜の暗さに怯え、ひとり布団の中で震えていた。
結局、暗さに耐えきれず、私は起き上がって電気をつけた。
ふと、母の愛用のドレッサーを見た。
机の上には使いかけの沢山の化粧品と香水。
私は一つの香水を手に取ると布団に潜り込んだ。
仕事に行く時に母はこの香水をつけていく。
私は1回だけ自分の服に香水をつけた。
…ああ、お母さんの香りじゃない。
こんなきつい香りじゃない。母はもっと優しい香りがする。
だけど、どうしようもない。
香りを変えることは私に出来ない。
母の香りを、母を求めて、香水のあの香りを嗅ぎながら目をつぶる。
いつか一緒に寝れますように、そう願いながら。
枕を涙で濡らし、ひとり寂しく香りを嗅いだ。
お母さん、お母さん。
8/30/2024, 3:04:59 PM