君だけのメロディ
君は笑っていた。
魂は悪意に傷付けられ、
痛みで悲鳴を上げ、
心は生きる苦しみに、
泣き崩れていたのに。
君を救いたかった。
冷たい差別の目からも。
この世の醜さからも。
例え、社会の片隅でも、
影に潜み、息を潜め、
君と二人、生きていけたら、
それだけで良かったのに。
世間の悪意に晒され、
君は自分に嘘を吐くのが、
上手になってしまった。
泣きたいのに笑い、
苦しいのに微笑む。
そして、
姿を真似ない鏡を壊すように、
自分自身を破壊する。
君は何も悪くない。
なのに、君は、
自分を責め続けるんだ。
私は君を抱き締める。
もう、泣かなくていい。
もう、責めなくていい。
瞼を閉じ、耳を塞ぎ、
こんなにも醜い人の世を、
忘れた振りをしても構わない。
君の温もりの中から、
鼓動が聞こえる。
とくん、とくん。
生きようと、必死に奏でる、
君だけのメロディ。
何よりも美しい、音色。
私は…。
君だけのメロディを守る為なら、
生命など惜しくはない。
ずっとそう思ってきた。
だから…。
君が、私を欲しいと言ったから。
この身に、君の刃を受けた。
この生命も魂も、
君に差し出す為に。
真っ赤に染まる君が、微笑む。
君は真っ赤に染まった刃先で、
自らの胸を貫く。
君だけのメロディが、
消えゆく私の鼓動と、重なる。
…やっと、心から笑えたんだね。
6/14/2025, 9:06:03 AM