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失われた時間

 公職の不祥事であとから文書が公開されることがあるが、それらは必ずと言っていいほど黒塗りの部分がある。

 大抵は、国家の秘密保持または人権に配慮して、という理由だがなんのことはない。不都合を隠しているに過ぎない。

 それらの事象を無くすことはできないが、決して有意義なものではない、という意味で、黒塗り部分は、失われた時間の結晶と言っていいかもしれない。

 仮にだが、黒ではなく別の色ならどうなるだろう。そもそも、黒は暗く後ろめたいイメージを象徴することが多いはず。それをわざわざ使用するのは、嫌悪感がさらに倍増するだけなのではないか。

 日本人が好きな色第一位は、水色らしい。爽やか、清々しい、透明感がある、といったところなのだろう。

 黒塗りを水色塗りにしてみたら、と想像してみた。確かにずっと爽やかになるような気がする。罪さえも少し軽くなるような、そんなイメージだ。

 まあ現実には、自体を甘く見ているのか、との批判が殺到するので、強いおすすめはできないが。

 失われた時間とは少し異なるかもしれないが、忘れたい過去、というのはある。嫌な過去だ。忘れたくてもなかなか消えてくれない。

 そういえば、脳裏にその過去が浮かぶとき、黒っぽい映像な気がする。

 もし次に浮かんだときは、水色補正をかけてみようかな。メランコリーな気持ちが、いくらか薄れてくれるかもしれない。
 

5/13/2024, 12:08:29 PM