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ざぁざぁと水の叩きつける中
君は真っ直ぐ前を見ていた
見兼ねて差し掛けた傘の影に
一つの気を止めることもなく
しとしとと霧の揺蕩う中
君は真っ直ぐ前を見ていた
見兼ねて被せたコートの色
一つの気を止めることもなく
カンカン照りの晴れた空
其処には誰も居なかった
水面に揺らぐ人の影
一つの言葉も届かない

‹雨と君›


「……おいおい、まだ夏季休暇中だぞ」
「あれ、そうだった?どうりで」
「まさかとは言ったが本当に間違う奴がいるか」
「だって去年までこの日だったじゃん」
「昔は昔、今は今。ほら、閉めるから帰りな」
「んー先生も帰るなら良いよ」
「……そもそもお前みたいな奴がいるから帰れないんだがなぁ」
「あー…っとそれはごめんね?」
「言ってる暇あったら支度しろ。帰り道は大丈夫か」
「大丈夫大丈夫、そこまでボケてません」
「いやそうじゃなく……まぁいいか」
「よいしょっと、おわったよ!」
「行くぞ、逸れんようにな」

‹誰もいない教室›


どぉん、どん と花火の音
穴ぐらから空を見上げた
明るい空でも鮮明な色を
賑やかに楽しむ人の声
色が上がる 色が上がる
青、黄色、緑、赤
青は決裂、黄色は先制
緑は刻限、赤の数は…
静か静かに走り出す
壊れた通信機は奥深く
気付かれ封鎖される前に早く
早く祖国へ戻らねば

‹信号›


「おはよう」と言えたなら
「おやすみ」と言えただろうか
「いってきます」と言えたなら
「ただいま」と言えただろうか
「      」と言えたなら
「おかえり」と言えただろうか
願いを言葉に出来ていたなら
君は叶えてくれただろうか

‹言い出せなかった「」›

9/8/2025, 10:05:11 AM