突然、先輩に呼び出された。平日の、朝の4時に。
「日の出見に海に行かない?」
着信音に叩き起こされて耳に当てたスマホの向こうで先輩が言う。言葉の意味をひとつも理解できないまま、僕は準備をして家を出る。
波の音は静かで、空気は冷たくて、僕達以外には誰もいなかった。冬は太陽も寝坊助になる。呼ばれてからすぐに来てしまったせいで、日の出まではまだ時間がかかりそうだ。
先輩はいつもどおりだった。こんな時間に呼び出すから何かあったのかと心配したのだが、別にそんなことはないらしい。まだ薄暗い空の下で、波を避けて遊んだり砂に文字を書いたりしている。その後ろ姿を見た僕はホッとして、同じくらい腹が立った。だから黙って隣に座り込む。先輩はにんまりと嬉しそうに笑うだけで何も言わなかった。
じわじわと浸透するみたいに明るくなっていく空を眺めながら、ぽつりと尋ねる。
「なんで日の出見たかったんですか」
先輩は僕を見て、一瞬ぽかんとして首を傾げる。その横顔が、あたたかい光に包まれる。神々しいとまで思えるその景色。
「君に会いたかったから」
何を当たり前のことを、というような顔で、先輩は言った。僕は信じられなくて、思わず深いため息をついた。
もう一度言うが、今日は平日である。当然学校もあるし、放課後には必ず先輩に会う。何もしなくたって、わざわざこんな時間に海に呼び出さなくたって、日の出なんて見なくたって、僕は先輩に会いに行く。
日が昇る。素敵な光景だ。これを先輩は、意味もなく僕に会うためだけに使った。その事実がたまらなくて、「今日は学校サボりませんか」と提案する。先輩は怪訝そうな顔をしながら、それでも笑ってうなずいた。
1/20/2026, 1:58:08 AM