SF
300字小説
闇に願いを
「……昔、インカ帝国ではね、あまりに星が見えすぎて、夜空の星の無い暗い部分を動物とかに見立てて星座を描いていたんだよ」
そう彼が言ったのは遠足に行った宇宙エレベーターの展望台だったか。そこから見る銀河系の中心は無数の星が瞬いていて、確かに、その間の暗黒星雲くらいしか形をたどれるものは無かった。
「いつか、僕もあの星の中に……」
彼はその後、銀河系の中心を探索する調査団に入った。
古のような帰ることの無い探索。無事に目的を果たせるかも解らない危険な調査だ。
「行ってくるよ!」
それでも瞳を煌めかせて船に乗り込み旅立った彼。
煌めく光は宇宙放射線を伴う危険な星域。その隙間の黒い影に彼の姿を描き、私は無事を祈る。
お題「星座」
10/5/2023, 11:08:20 AM