雨が屋根に当たる音。
包丁が野菜を刻む音。
コトコトと煮込む音。
そんな音で目覚める朝、まだ覚醒しきらない頭のまま。
ゆっくり身体を起こすとあの子がこちらを振り向いて、
「やっと起きた、おはよう、お寝坊さん」
と笑う。仕方ないなあって顔で。
愛おしさが膨れ上がり、縺れる足もそのまま抱き締める。
わ、と驚いた声を上げて、それでもやっぱり
仕方ないなあって笑って抱き締め返してくれる。
そんな、そんな優し過ぎるおうち時間。
ああ、そんな時間を過ごしたかった、なあ。
ぴ、ぴ、と何かを図る音。
落ち着きのない大人の声。
強過ぎる力で握られる手。
そんな音を聴きながら、ゆっくり意識を手放す。
最期に見たあの子の顔は、どうしてか思い出せない。
ピーーーーーーーーーーーーーー。
5/14/2023, 2:23:45 AM