白糸馨月

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お題『さよならを言う前に』

 マッチングアプリで知り合った女の子との食事は楽しかった。僕なんかのいいねを受けてくれて、僕にはもったいないほどかわいくて細くてオシャレで、僕とは比較にならないほど話するのが上手くて。
 その一方で僕は緊張してロクに喋れなかった気がする。かわいすぎて直視できなかったし、お酒弱いし少食だから一緒にいても楽しくないんだろうなと思う。今回の場は、彼女がもたせてくれたようなものだ。
 それでも一緒にいて楽しかったから、だから勇気を振り絞って言おう。
 改札の前に着いた時、僕は言った。
「あ、あのっ……!」
「はい」
 彼女はニコニコ笑って僕の呼びかけに応えてくれる。
「来週の土曜日、あいてますか?」
「はい! もちろん」
「今度、どこか行きませんか?」
 このやりとりがもうドキドキする。すると彼女は花が咲くような笑みを僕に見せてくれた。
「ぜひ! 行きましょ!」
 僕なんかの誘いに乗ってくれるなんて本当に女神かなと思う。
「じゃ、じゃあ……場所はまたLINEできめましょう」
「分かりました! 楽しみにしてます! ではまた!」
 そう言って彼女は改札に入って、僕に手を振る。
 僕は手を振返しながら心のなかでガッツポーズを決めた。

8/20/2024, 11:49:26 PM