冷え性のわたしは冬になると指の先から冷たくなる。
恋人はわたしの手を握ると
「うわ、冷たいなぁ〜大丈夫か?」
と言って、手を握ったままコートのポケットにふたつの手を入れる。わたしの冷たい手のせいで恋人の手まで冷えてしまうのではないかと不安になり
「冷たいやろ、ごめんな」
と謝ると
「まかしとき」
と言ってポケットの中の手をいっそう強く握ってくれた。
恋人の体温がわたしに溶け込むようにうつり、いつの間にかわたしの手は恋人の手と同じあたたかさになっていた。
なんだかもうこのまま一生冷え性でいたいと思った。
あたためてくれたのは手だけじゃなかった。
「冬のはじまり」
11/29/2022, 2:57:36 PM