透明でいることに耐えられるのは、よほど強い自我や感情がある者だけだろう。
自分が確かにそこにいるのに、相手にも見えているはずなのに、まるでその場に存在していないかのように素通りされる。
私はここにいます。
私はここで生きています。
私の声を聞いてください。
私の顔を見てください。
私の感情を知ってください。
言葉にせずともそう訴えていた彼女を、誰も彼もが〝いないもの〟として素通りした。
その孤独を、誰も彼もが知らないふりをして見過ごした。今ではもう、彼女の顔も、声も、瞳の色も·····誰も思い出せないでいる。
透明であるということは、存在しないということに等しいのだ――。
END
「透明」
3/13/2025, 11:03:12 AM