【届かないのに】
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あの人はいつでも自分に厳しい。
決して現状に満足することはない。
あの人は“守られてばかりの弱い奴は気に食わない”と言っていた。あれ程自分に厳しいのだから、そう言うのも納得でしたし、彼らしいと微笑ましくすら思えた。
そんな彼に少しでも近づきたくて、強くなろうと鍛錬に明け暮れた。身体のつくりが違うのだから、どんなに頑張っても、私があの人に追い付くことはできない。
それでも、諦められなかった。
あの人が、“強くなったな”と言って笑ってくれるから。例え追い付けないとしても、それを理由に諦めたくなかった。停滞なんてしている場合ではない。
強いあの人に相応しくありたい。
隣に立つことが出来なくても、あの人に認めて貰えるだけで、私は救われるのだから。
だから私は、届かないとわかっていながら、
今日も鍛錬に身を入れるのだ。
6/18/2025, 9:03:45 AM