ミキミヤ

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飛竜に乗って、大空を駆ける。俺はそれを生業にしている。

今も、先の大戦で傷ついた我が国の友好国へ物資を運ぶ仕事をこなしてきた帰りだった。
地上では、家を失い、家族を喪い、怪我をして、心も傷ついて、苦しんでいる人達がたくさんいた。俺を神様みたいに拝んでお礼を言ってくる人も、悪魔を見たかのごとく罵声を浴びせてくる人も、両方いた。俺の国は今は友好国へ復興支援をしているけれども、戦争中は直接戦力を割かず、裏から武器や政治で戦争に加担していた国だ。どういうふうに言われてもおかしくない。分かって就いた仕事だったが、それなりに精神は削られていた。

俺の落ち込みが分かったのか、相棒の飛竜がちらりと目線を俺によこした。「大丈夫か」と言われた気がして、俺は「心配いらねえよ」と、飛竜の背中を撫でて答えた。相棒はそれきり、正面を向いて飛ぶことに集中したようだった。
俺もそれを追って目線を正面に向ければ、果ての見えぬ大空が視界いっぱいに広がった。その雄大な美しさには、俺の疲弊した心を癒すのに充分な力があった。

地上では、いろいろないざこざがあって。俺は幸いにもその渦中にいたことはないんだけれど、それでも心は傷んでいて。
それとは対照的に、大空はいつも自由で、優しくて、偉大なんだ。
地上の苦しみなんてこうして飛竜に乗って大空を駆けていたら忘れさせられてしまう。
大空には、そんな包容力があった。

国に向かって、飛竜を駆る。身体の脇を吹き抜けていく風が、ひどく心地よかった。

12/22/2024, 6:57:49 AM