未来への鍵 と あたたかいね です。
未来への鍵
「…どうかしたの?」
今日は家でのんびりしよう。と言われ、キミの家に来たのに、肝心のキミはソファに座りボーっとしている。
「ねえってば」
顔の前で手をひらひら振ると
「え?何?」
ハッとした顔で、俺を見る。
「さっきからボーっとしてるけど、何かあった?」
「え?」
「お家デートなのに、1人で映画を見ててもつまんないんだけど」
唇を尖らせると
「ごめん、ごめん」
キミは苦笑する。
「何か悩んでるんでしょ」
「え?」
「俺、彼氏だよ。見てればそれくらいわかるって」
キミの頭に手をポンと乗せると、キミは俯き
「…仕事、辞めようかと思って」
弱々しい声でつぶやく。
「そっか。仕事を辞めて、困るようなことがあれば何でも言って」
髪を優しく撫でると
「…反対しないの?」
顔を上げ、泣きそうな顔で俺を見る。
「するわけないよ。そんなに思い詰めるほどなら、むしろ、辞めることを勧める」
「………」
「キミは今、次の未来へと進む、未来への鍵を手にしてるんだ。あとは、扉を開けるだけ。俺もそばにいるんだし、恐がらずに次の扉へ進もうよ」
「…ありがとう」
俺にギュッとしがみつき涙を流すキミを、俺は優しく抱きしめたのだった。
あたたかいね
「う〜寒っ」
コートの襟を立てて、寒い風が吹く中を歩いていると
「お疲れさま、今帰り?」
背中をポンと叩かれ、声をかけられる。
「お疲れさまです。主任も今帰りですか?」
隣に並んだ主任を見ると
「うん、駅まで一緒していい?」
笑顔を向けられる。
「はい、もちろんです」
「ありがと」
主任のことが気になっていた俺。心の中でガッツポーズをしていた。
「それにしても、寒いね〜」
仕事の話しをしながら駅に向かって歩くも、向かい風が吹き付け、寒さが増していく。
「ホントですね。気休めにしかならないでしょうが…」
俺は自販機の前で立ち止まり
「良かったら」
コーンポタージュを買い、主任に渡す。
「ありがとう」
主任はコーンポタージュを受け取ると、それを頬に当て
「あたたかいね」
微笑む。
「………」
主任の微笑みに、胸が騒ぎ出すのだった。
1/12/2025, 7:38:49 AM