東雲 陽

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君は今

 「ひとりじゃない」とか「何があっても味方だよ」とか、そういう上辺だけの言葉が嫌いだった。
だから、喜怒哀楽を両手いっぱいに抱えられるだけ抱えて、たまに取りこぼしながら一人で生きることにしていた。
上手い言葉を使いながら心底では損得勘定で動くような人間関係に飽き飽きしていたのかもしれない。
気づけば周りには誰もいないことが普通になっていた。

 ──それはたった一つのイレギュラーだった。

 いつからか併走するようになったその存在は頑なに荷物を受け取ろうとした。そうして、両手いっぱいだと前が見えないよと笑った。下手くそな言葉を使って、損得勘定以上の好奇心で踏み込んできているようだった。
いつの間にか君の並走が日常になっていた。

 ──手離したくない。

 初めて、誰かにそう思った。近づいてきた君の今が幸せかどうかは分からないけれど、大嫌いだった「ひとりじゃない」が少しだけ許せるようになった。

2/27/2026, 7:23:27 AM