桜花 爽来

Open App

テーマ「心だけ、逃避行」

大学生になって、僕は人生で初めて恋というものをした。

しかしあの子は完璧すぎる。
恋は盲目というものではなく、誰に聞いても全員口を揃えて「あの子に欠点はあるのか」と言うほどに。
完璧だから好きになったのではない、好きになった人が偶然完璧人間だったんだ。
何を考えてもあの子と僕の間にある大きな差が僕の心を少しづつ切り裂いてくる。
付き合いたいなんて贅沢は言わない。でもほんの少しでも僕を見て欲しい。
だから少しでも追いつこうと思ったんだ。

手始めに勉強を頑張ることにした。
高校までまともに勉強をしてこなかった。英語はbe動詞でギリギリだし数学は加法減法でつまづいている。
どうやって大学に合格したんだろうと僕でも思う。
元々やってこなかったからこそ結果は目に見えるほどに良くなった。

次は度胸づけをしようと思った。
だから僕なら絶対に避ける道に足を踏み入れることにた。
大学祭実行委員会に入って、企画で司会に立候補した。司会なんて最も避けたい道であるのに。
まあ、まだまだこれからだからゆっくり舞台の上に立つ度胸をつけていこうと思う。

他にも取り組んだことはたくさんあるが今回は割愛する。
しかし、ひとつだけ取り組んでいないことがある。何よりも大事なことは誰よりも分かっているつもりなのにずっと逃げてきていることがある。

僕はあの子に話しかけたことがないのだ。
小中高ずっと孤独に生きてきた。今更人に話しかける方法なんて分かりっこない。
そう思って諦めてきている。
「心だけ、逃避行」 これはきっと僕のことなんだろうと思う。
僕を見て欲しいのに遠回りな方向ばかりに走って肝心なことをしていないのだから。

7/11/2025, 10:33:56 AM