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君と一緒に(オリジナル)(異世界ファンタジー)

おいらの話をしよう。
おいらは人に変化できる鳥族で、吉兆の吉鳥だ。
物心ついた時にはもう籠の鳥だった。
幸福を呼ぶ鳥として自由を封じられ、鳥族の王が住まう屋敷の奥に囲われていた。
けれど、おいらに吉鳥の自覚は全くない。
だから、ただの迷信だ。
虹のような七色の尾羽と、成長の進みが遅いという特殊体質のせいで縁起良く思われただけだと思う。
何の力もなく、だからこそ籠からの脱出もできず、日々を無為に過ごしていた。

変化が訪れたのは、王妃が双子を産んでからだ。
鳥族では双子、特に雌は不幸を呼ぶとして忌み嫌われていた。
おいらと同じく迷信だと思う。
とはいえ、おいらを囲っているのにこの不幸。効き目がないとわかって自由にしてくれたら良かったのに、そうはならなかった。
彼女はおいらの近くに幽閉された。
彼女はおいらの事など何も知らずに話しかけてきて、一緒に歌ったり遊んだりしてくれた。
幼くて無垢で可愛かったなぁ。

成長してしばらくすると、彼女は色々連れ出されて戻らない事が増えた。
戻ってくる時は大抵大怪我をしていて、息も絶え絶えで床に横たわっている事がほとんどだった。
鳥族には色々敵がいて、戦闘に駆り出されているらしかった。
不幸を呼ぶ雌などいつ死んでも良いという周囲の思いが透けて見えて、おいらは生まれて初めて怒りを覚えた。

けれど、彼女は強かった。
生き残り、能力を磨き、美しく優しく強く成長した。

決定的な事が起きたのは、王を継ぐ試練を双子の雄が受ける場面でのことだった。
あいつは命惜しさに彼女を盾にしたんだ。
彼女はヤツの代わりに無事試練を乗り越えたが、それを知られる事を恐れた雄が彼女を殺そうとした。
おいらはその時、試練にちょい巻き込まれて籠から放り出されていたので、彼女とともに逃げ出す事ができた。

追っ手から逃れるため人型に変化したおいらを見て、彼女は驚いていた。
見た目がかなり年下の少年だったからだろう。
おいらの特殊体質の事を、彼女は知らない。
実は彼女の5倍は長く生きているおっさんなんだが、それは秘密だ。

初めての自由。

見た目相応に年甲斐もなくはしゃいでいたら、色々事件に巻き込まれた。その度に彼女に呆れられたり助けられたりもしたけれど、良い出会いはあったと思う。
彼女ははその間、こっそり恋したり失恋したりもあったようだけれど。

心配しないで、大丈夫。
おいらはずっとそばにいるよ。

彼女とともにいられるのであれば。
どこにいようとも、何があろうとも、楽しく生きていけるし、ともに死ねる。おいらは本当に、何の力もないのだけれど、彼女にとっての吉鳥でありたいと思うんだ。

1/6/2026, 1:05:53 PM