ある年のクリスマス。私達にはお祝いムードはどこにもなくそこには同期を失った悲しみと虚しさだけ。
「ね、悟」
「……なに」
「傑の話、しようよ」
「えー、今更?」
何食わぬ顔で笑っているがそれが偽りの笑みだって事くらい分かる。
「そう、私の知ってる傑。悟の知ってる傑。思い出話を沢山話をしよう」
悲しい時は思いっきり悲しまないと後には引き摺る。
それに生きてる側が死者を思い過ぎると魂が向こう側へ行けないって聞いた事がある。
悟の手を握れば力なく握り返される。昨日の今日で誰も気持ちを切り替えることなんて出来るわけない。
「ね、弔いも兼ねてさ。傑が居なくなってから皆、彼の話しなかったしさ今日は特別。沢山話をしよう」
許可を得る前に悟の隣を陣取り話し始める。
「どっちが傑のネタ持ってるか勝負しよ!」
私の思いを知ってか知らずか諦めたように溜息をつき目隠しを外す。その青い瞳は昨日見た時より幾らか透き通った気がする。
「…それ、僕が負けるとでも?」
私たちの大切な人だった思い出。
-友だちの思い出-
7/6/2024, 10:24:32 AM