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好き嫌いの続き

未来

いつかの遠い未来 皆とお別れする日が
来ても皆が幸せなら嬉しい
そう思っていたのに....

「え.....」ルークさんの言葉に私は、
目を丸くする。
バインダー局に出掛けようと思っていた
時だった。

「だからねシズクちゃん君には、バインダーって仕事は、危ないよ それに
君は、まだ未成年だし本当なら学校に
行くのを優先すべきだよ!」とルークさんはにっこりと笑顔を浮かべ続けてこう言った。
「だから僕としては、バインダーの仕事を
辞めて欲しいんだ バインダー局にも
出来れば行かないで欲しい!」

私は、ルークさんの言葉に戸惑いながら
答えた。

「学校もちゃんと行ってます....
それに....魂狩りは、してません....」
私の答えにルークさんは安心してくれると
思った だから次に返された言葉に
私は、何も言えなくなってしまった。

「だからこそだよ 魂狩りをしていない
君がバインダーの仕事をしていても
無意味だよ 分かるよね 君の治癒術は
確かに役に立っているかもしれない
でもそれだって普通の治療で足りる
君の治癒術は、救急箱を持って来る手間を
少しだけ軽減させるだけその程度なんだよ
だったらわざわざそんな危ない橋を
渡る必要なんて無い

君がもし魂狩りの現場に居て取り返しの
つかない怪我でもしてしまったら
それどころか君を守る為に君の大切な人が
怪我をしたら君だって気に病むだろう!」

それを聞いて、私は押し黙るしか無い
それは、私が心の中で何度も過って
そして蓋をして考え無い様にしていた
事だったから.....

問題を先送りにした私がいけないんだ....
皆が怪我をするのは、嫌 だけど....

「た....魂狩りも....あまり 危なくない
エリアを回ってて....だから....」

分かっているのに.... 私は、聞き分け悪く
最後の抵抗をしてしまった....

するとルークさんは、静かに小さな子供に
言い聞かせる様に私に言う
「シズクちゃんわがままを言わないでくれ
君に何かあったら 僕は、姉さんと義兄さんに顔向け出来ない.....
お葬式の時は済まなかった 僕も気が
動転していて 君に当たり散らして
君を置いて行ったりして .....
でも.....だからこそ たった二人の家族と
して僕は、君とやり直したいんだ
お願いだ僕に償いのチャンスをくれないか....」ルークさんの声が次第に弱々しく
なって懇願する様な声音になって行く

「.... 償い....なんて....そんな風に
思わないで....下さい....ルークさん....」

私は、しゃがんで くずおれてしまった
ルークさんを抱きしめる。

そうしてルークさんは此処では無い何処かを見る様に遠い目をして私の耳元で囁く

「ありがとうティア大好きだよ!」
そうして私の背中に腕を回したルークさんを私も抱きしめ返した。

私の中にお母さんを見ているルークさんを
.......。


途中『シズク....俺....お前に大事な話しが
あるんだ....』ハイネが最後に言った
言葉が頭の中に浮かんだ。

(ハイネのお話し....聞けなかった....
ハイネ....ごめんね....)
私は、心の中でハイネに謝った。






未来②

またいつでも会えると思っていた。
これからもずっと会えると思っていた。
だからあの時 手を離して気持ちを
伝えるのを先送りにしてしまった。

こんな事になるなら手を離すんじゃなかった この先も ずっと ずっと先の未来も
いつもの様に会えると思っていたから
気付かなかった。

シズクは、笑顔の奥でこうなる事を
予感していたんだろうか.....
分からない.... いつだって周りの事
ばっかで自分の事を後回しにする奴だから

シズクがバインダー局を辞めたと局長から
聞いた時は最初信じられなかった。
頭の中が真っ白になった。

唐突過ぎて頭が上手く回らなかった。

ナイトとミーナが場を取りなす様に
「でも まぁ学校に行ったら会えるんだし
大丈夫だよ!」

「そうよ!暗くなる必要なんか全然無いわ
ハイネあんた学校さぼってばっかだったん
だからたまには登校しなさい卒業出来なく
なるわよ!」

ミーナの指摘も何処か上の空で聞いていた。
「.....ああ...」

そんな空気を変える様に 局長席に座っていた局長がパンっと手を鳴らした。

「じゃあシズク君の分まで君達には、
魂狩りを頑張ってもらいたい
場所はマリア君が地図を出してくれるから
聞いてくれ」

そう言って俺達三人は魂狩りに出掛けて
行った。

そうして三人の後ろ姿を見送ったハロルド
局長は、一緒に残ったマリアにため息を
吐きながらぼやく
「はぁ~まさかこんな事になるとわねぇ~」

「ハイネ君大丈夫かしら?」マリアが
心配そうに三人が出て行った扉を見つめる。

「そうだねハイネ君に調子を取り戻して貰わないと家は大損害だからね!」
ハロルドは、やれやれと両手を横に上げる。

「いえ 局長 私はそう言う事を心配しているんじゃありません」
マリアが呆れた様にハロルドを見つめる。

「分かってるよ」ハロルドはマリアに
おどけて見せながら

ルークファーラムが自分を訪ねて来た時の事を思い出す。

「今まで姪の面倒を見て頂きありがとうございます その事には感謝してもしきれま
せん」そう言ってルークファーラムは
にっこり微笑むと....
「しかし姪には、この環境は合わないと
思うんです彼女は、とても脆弱で繊細
ですから.... これからは普通の生活を
送らせてあげたいんですそれが僕が
姪に出来る精一杯の償いですから....」

そんな一連のやり取りを回想して
ハロルドは呟く「償いねェ.....悪いと
思って居るなら今頃になって引き取りに
来る事自体シズク君にとっては辛い話しだと言う事に何故気付かないかねぇ
あの御仁は....」ハロルドは机の上で
指を組みながら言った。

ルークファーラムに最後にハロルドが
掛けた言葉「僕はシズクさんが脆弱とは
思っていませんよファーラムさん」
その言葉に対しルークファーラムの答えは

「それは、皆さんが陰ながら姪を守って
くれたお陰でしょ?本当に感謝していますよ」

果たして守られて居るのはどちらか.....
あの年になってもそれが分からないガキの
ままならこっちにも考えがある....

少なくとも可愛い部下を泣かしてその
未来を奪う様な事になったら..... その時は
.... 「これから忙しくなるよマリア君
準備だけはしておいてね」
マリアはハロルドのそんな真意を深く
追及する事無く
「かしこまりました」と頭を深く下げたのだった。

6/18/2024, 7:10:26 AM