――私の愛は、あなたを知りたいということ
かつて、亡き母が遺した言葉を僕はずっと覚えている。
その意味を聞く間もなく息を引き取り、永遠に返ってこない答えを求め続けるのだ。幼かった僕には分からなかった言葉の意味を、正してほしい。
何冊ものアルバムを積み上げて、それでも足りないと嘆く父の背を撫ぜる。すっかり小さくなってしまったそれに気づかないふりをして話の続きを促した。
訥々と語られる思い出話を、ページをめくりながら振り返っていく。1つが2つへ、2つが3つへ、3つが2つへ。そして近く2つが1つへと変わるときがくる。
そのとき僕は、どうしたらいいのだろう。
遠くに揺れる煙に懐かしさを覚える。
もう随分と時間が経って、1つになったはずがいつの間にか二桁にまで届いてしまった。いつかの父と同じ背を僕とよく似た子が撫ぜる。
ようやく母の言葉の意味がわかった。
ただ失うよりもずっと寂しいものだ。それが愛であるとするならなおさら、
「しゃんとしなさいな」
もう聞こえないはずの声が、記憶の海を渡って僕に届けられる。顔も、名前も、思い出せないのに知っている。
確かにあった、隣にあった。手を取り、抱き合い、共に歩いた君を、僕は忘れていたらしい。
――もう一度、君を知りたい
だから、会いにいくよ
【題:I love】
6/12/2025, 3:38:33 PM